ペットショップにて -実際に体験して感じたこと-

現在、世界中が新型コロナウィルスに翻弄されています。
人々の健康第一はもちろんなのですが
経済への影響が深刻ですね。
和音でも、ペットシッターのご依頼のキャンセルが相次ぎました。
人々がいろいろな活動を自粛して家にいることで
ペットちゃんたちにとっては幸せなことなんですけどね。

そのこともあって
3月はトリマーの仕事を積極的に増やし、
スポット勤務で動物病院やトリミングサロンでトリミングをさせて頂きました。

そのうちの1つが
生体販売をしているペットショップに併設されたサロンだったのです。
これは予定外であり、希望していたことではなかったのですが
スポット勤務ですし、行き違いがあったとはいえ契約したわけですから
これも一つの経験ということで働かせて頂きました。
そんなわけで、今回図らずも身を持って体験することとなった
ペットショップでの生体販売について改めて感じたことを書かせて頂きます。

そもそも生体販売をするペットショップの何を問題としているのか??
から整理しておきます。
ここでは
“命を売買するなんて、、、”
というようなセンチメンタルなことを言いたいわけではありません。
きちんとした飼養管理を行うプロが手塩にかけて育てた子犬や子猫を
その後家族となるヒトにお譲りする際、
相応の価値を金銭のやりとりによって交換することは、
現代社会においては至極まっとうなことです。

問題としているのは
子犬や子猫の健やかな生育を念頭において考えた時に
現在の日本のペットショップやそれを規制する動物愛護法が
まったく適切とは言えない状況にあるということです。
動物愛護法については、今回深く掘り下げませんが
現状では、生後7週間=49日までは親兄弟から離してはいけない
ということになっています。
従って、子犬・子猫たちは生後50日目きっかりに売りに出されるのです。
このタイミングで個別にダンボールに入れられ、
競りにかけられてペットショップへ移送されていくのです。
この日からは各店の管理の方針に任されます。
犬も猫も概ね同じですが、ここでは犬について書いていきます。

問題点1:展示販売
多くの販売業者は店頭で展示販売をします。
日本人は他国に比べ子犬・子猫信仰が激しく
できるだけ生後日数が早く未熟なコが好まれます。
犬や猫を深く愛する人間にとっては
子犬ほど、子猫ほど可愛いなんて信仰はないんですけどね。。。
むしろ歳を重ねるほどどんどん可愛くなるものですよ。

まあ、それは置いておいて
できるだけ未熟で頼りない子犬や子猫を人々の目に触れさせ、
さらには興味を持ったヒトに抱っこさせ
極端に言えば衝動買いをさせることを狙っているわけです。
言わずもがなですが
ペットは衝動買いしていいものではありません。
一生を引き受けることが本当にできるのか
よくよく考えて、しっかり準備してお迎えする必要があります。

私がトリミングの手伝いに行ったショップは
完全予約制で面会を行った上で販売する方式でしたから
この点においては、賢明な店であると感じました。

問題点2:居住スペースとトイレ
展示販売の有無に関わらず
子犬たちは個別のケージやショーケースに入れられます。
当然のことながら店舗のスペースは限られています。
また子犬たちは頻尿頻便ですから
子犬のケージやショーケースは
トイレメインに作られていることが非常に多いです。

犬たちは本来たいへんキレイ好きです。
子犬は頻尿ですが、自分の寝床を汚すことを嫌って
特に教えなくとも寝ていた場所と違うところに
おしっこやウンチをする習性があります。
ですから、心地よく眠るスペースと
離れたところにシートを敷いておけば
そこがトイレと認識します。

ところが、居住スペースのほとんどがトイレトレーのような環境にいると
必然的にトイレの上で眠るようになり、
寝床とトイレの区別をしなくなります。
当然子犬がウンチを踏んづけてしまうことがよく起こります。

子犬だから仕方ないか、、、とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、
前述のようにトイレと居住スペースを分けて育てた子犬は
おしっこやウンチを踏んだりしないものです。

私がお手伝いしたショップは衛生管理が徹底されており、
マニュアルにしたがって担当者がトイレトレーの消臭殺菌を毎日行うのですが
残念ながら個々の子犬のスペースはやはりトイレメインとなっており
本来必要なことは、子犬がウンチやおしっこをするたびに
頻繁にシートを交換して子犬がウンチやおしっこの上で寝させないことですが、
そのマニュアルはそれには適していないのです。

そしてショップというものは、
夕方以降次の朝開店準備のためにスタッフが出勤するまで
基本的に無人となります。
その間も子犬たちはトイレの上で過ごし、ウンチやおしっこをし続けます。
ウンチが身体についてしまっても無理はないですよねぇ。

そして慣れとは恐ろしいもので
トイレトレーの上で寝ることを心地よく感じるようになったりします。
お家に引き取ってからもわざわざトイレトレーの上で眠る子犬ちゃんは少なくないですよね。
これはショップ出身の子犬ちゃんの特徴です。
ここからでもトイレトレーニングはもちろん可能ですが、
わざわざ1歩下がったところからのスタートとなることは残念です。

問題点3:子犬の社会化
この言葉をご存知の方は多いと思います。
子犬の時期は他の犬や人間や外の環境をたくさん体験し、
これから家庭犬として生きていくためのベースを作る大切な時期です。
犬の場合、生後14週目まではまだ警戒心がなく
この頃までに経験したことは何でも受け容れるので
14週までの間に抱っこでお散歩するなどして
外の世界に触れさせることはとても大切です。
これをしておくとビビリな犬にはなりません。

生後14週というと、3ヶ月と少しですから
日本のペット産業の流通上では
法的に親元から離してよいとされる生後8週目から
この14週目までをペットショップの個別のケースの中で過ごす子犬がほとんどです。

そして中にはかなり早いタイミングで成約となり
一般家庭に迎え入れられる子犬ちゃんもいますが
第2の社会化阻害要因が待っています。
それは、、、、

ワクチン神話

子犬を迎えた人へのアドバイスとしてよくあるのですが、
なぜか、ワクチンが3回終わるまでは外に出してはいけない
と言われるのです。
これは家庭に迎え入れられたワンちゃんにも
まだショップで過ごしているワンちゃんにも重くのしかかる問題です。

私がお手伝いしたショップでは
ワクチンが3回終わるまでは店内の子犬同士のふれあいもNGとされていました。

ここでは別テーマとなるので
ワクチンについて深く掘り下げることはしませんが
ワクチンが3回終わるまで外に出したり
子犬同士を触れ合わせてはいけない
というのはまったく根拠のない説であり
子犬の社会化にとって
大きな弊害を生んでいると言っても過言ではありません。

ウチではトコもミクも
生後14週目、つまり98日くらいまでの貴重な時間に
抱っこで周辺をたくさんお散歩するようにしました。
車、自転車、電車、踏切、工事現場
老若男女の人々、走る子供たち、他のワンちゃんたち
普通の生活やお散歩で目にするものを
この時期に体験しておけば
子犬は難なく受け容れます。

お散歩として自分の脚で上手に歩く練習は
もっと後に別途行えばよいですが
ワクチンが終わるまでは!と
ずっとおウチの中に閉じ込めておいてはいけません。

ペットショップにいる子犬たちは
この貴重な時間をほぼトイレと一体化したケースの中で過ごすのです。
もちろん一言でペットショップと言っても様々ですから
子犬の生育にできるだけ配慮しているところもまったくないとは言えません。
ただ、彼らもビジネスですから
ペットショップという業態の採算性の観点から考えて
できるだけコストを抑えて短時間に売り切ることが第一と考えていることが現実です。
子犬にとって何が一番大切かを考える余裕はありません。

前述したように、私が体験した店では
「ワクチン終わるまでは個別管理」とされてましたから
スタッフさんたちはそれに従って、しっかり隔離してました。

子犬はそれまでの間に新しい家族に引き渡されなければ
つまり購入されなければ
定められた3回分が終わる頃、
つまり4ヶ月になる頃までそのまま個別管理で過ごしていくことになるわけです。

その店にとって大切なことは
病気を出さないことなのだと思います。
当然それはとっても重要なことですが、
そのために日々行われていることは
失礼ながら根拠に欠けると言わざるを得ません。

そのようなショップ勤務で私が何をしていたかというと
巣立って行くワンコたちのトリミングと
子犬たちの日々のグルーミングです。

「子犬たちは臭いのでこのオゾン生成器付きシャワーを使って」
と指導されたので使いましたが、
子犬ちゃんが臭いのはウンチ踏んだりおしっこがかかったりしてるからで、
トイレと寝床がきちんと別れていれば
臭くなんかなりませんよ。

高価なオゾン脱臭機を導入するより
トイレの環境整備とこまめな糞便処理をすればいいだけですよ。

名前を呼ばれることもなく商品として過ごす時間
ショップとは多かれ少なかれドライなところです。

最初にも書きましたが
子犬の売買自体が悪だと言うつもりはありません。

もちろん別の選択肢も考える価値は大いにあります。
買わずに保護犬を!という呼びかけも多く見られます。
それはたいへん素晴らしいことですが
保護犬の譲渡条件はかなり厳しく
犬への愛情はあっても、家族形態やお仕事の関係で
なかなか折り合いがつかないことがあるのもまた事実です。

私がトコやミクをお迎えしたのは
信頼できるブリーダーさんからでした。
もちろんブリーダーさんも十人十色です。
必ず直接足を運んでよく検討する必要がありますよ。

ペットショップももちろんすべて同じではなく
比較的よいところ、劣悪なところなど様々でしょう。
ただ、そうは言っても
ショップという業態を取っている以上、
現在の日本の法律とペット業界の流通や動向とを鑑みれば
子犬たちにとって必要最低限の良好な環境が担保されているところは
皆無であると言っても過言ではありません。
そのことはワンコを愛する皆さんに
よく知っておいて頂きたいのです。

ペット先進国のドイツでは
ペットショップが禁止されているわけではないですが
実際にはほとんどありません。
なぜならペットショップを運営する上で
犬のための必要最低限の基準がとても厳しく
それでは採算が合わないため
ペットショップを経営する人がいないからです。

そんなわけで
私のお初のペットショップでのお仕事は
3日間契約のスポット勤務でしたが
ドライになり切れない私は
勤務した日の夜は悶々として毎回眠れなくなるという悩みを抱え、
再契約は丁重にお断りして終了となりました。

ペットショップというところ
知識として知っていたことではあり
実際の現場も事前の認識とすべてが合致しておりました。

他に気づいたこととしては
同じような月齢で同じ環境で過ごす子犬たちですが
ベースの性格の違いは大いにあるということ。

グルーミングやトリミングをする際の反応もいろいろであること

印象的だったのが、とあるマルチーズの子犬ちゃん
ものすごく気が強く
爪切りやカットの時に噛んでくるのですが
生後2ヶ月半にしてかなりの本気噛み

このコはそのショップの関連会社であるブリーダーさん作出なのですが
同じ血筋で生まれた先代もまったく同じ行動をしていたそうです。
これは遺伝ですよね。
お顔はとっても可愛いのですが
あれだけの強さはかなり気合を入れてしつけないとたいへんなことになります。

マルチーズという犬種を選ぶ方は
そのような気の強さをあまり想定していないのではないかと思います。

ブリーダーさんはそのような点もよくよく考えて
家庭犬に向いている性格の子犬の作出に尽力してほしいと切に思いました。

以上、最初で最後のペットショップ勤務の記録とさせて頂きます。

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